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タイワンヤマネコの生態保育

発表時間 2016/10/10 21:30
更新時間 2018/12/07 10:47
閲覧者数 2129

タイワンヤマネコについて

学名:Prionailurus bengalensis

中国語名:石虎、ヤマネコなど。ベンガルヤマネコ。

英名:leopard cat

分類:食肉目 (CARNIVORA)ネコ科 (Felidae)  ベンガルヤマネコ属

ヤマネコの形態特徴

ヤマネコの形態特徴

ヤマネコの形態特徴
ヤマネコ

ヤマネコ

ヤマネコ(Prionailurus bengalensis)は中国語では「豹猫」とも呼ばれ、英名は leopard cat。体にヒョウのような美しい斑紋がある。また、斑紋がコインのように見えることから中国語で「金銭猫」の別名もある。単にヤマネコとも呼ばれている。ヤマネコの体形や大きさはイエネコと同じで、頭胴長は55-68㎝、尾の長さは27-32㎝、体重は3-6㎏。イエネコと比べてヤマネコは鼻口部が短く、耳が丸く、体色は灰褐色から黄褐色である。体と四肢、尾はオレンジと黒の斑紋があり、尾はやや短くフサフサしている。眼窩の内側からおでこには白い2本の縞線が伸びているのが特徴的で、耳の後ろにはハッキリとした白いまだらがある。夜間は視力がきき、聴覚は鋭い。犬歯が発達しており、歯式は3/3,1/1,3/2,1/1= 30。

ヤマネコの生態習性

生態系における食物連鎖でヤマネコの位置はピラミッドの頂上にあたる最高次消費者で、生態系の安定したバランスと生物の多様性に影響を及ぼす。生態と保育の面で極めて重要な価値を有する。台湾で行われたタイワンヤマネコに関する科学的な調査研究はここ10数年で徐々に始まったばかりで、その分布や出現の記録については清朝の古文書に記載が見られるものの、名称と形態や利用について書かれたのみである。現代の生物学的な分類方法に則り行われた台湾の哺乳動物学の研究には、1962年にイギリス人のRobert Swinhoe1が行った"On the mammals of the island of Formosa"(李玲玲・林良恭1992)がある。1895年に始まった日本統治期にも、台湾における哺乳動物の標本収集と記録があるが、タイワンヤマネコに関するこの時期の記録はほぼ形態的特徴、計測値、生態習性と行為についての描写であり、限られた記録にとどまっている。1970年末に野生動物学者が哺乳動物の研究を始めたが、初期はげっ歯類動物の生態、行為、危害と防除が中心で、その後、中大型哺乳動物の研究も徐々に増えたが、タイワンヤマネコの調査は特定地域における動物相の調査でタイワンヤマネコの記録が見られたのみである(王鑫等1987、王鑫等1988、林曜松等1989、王穎等1998)。1998年からは屏東科技大学野生動物保育研究所の裴家騏教授と陳美汀研究員が南部の低山(標高800メートル以下)区でタイワンヤマネコの調査を始め、タイワンヤマネコが南部地区ですでに地域的に絶滅している可能性があることを発見した。これによりタイワンヤマネコの分布調査を含む、ネコ科動物を対象とした調査が始まった。

タイワンヤマネコの生態保育

タイワンヤマネコの生態保育

広葉樹林-タイワンヤマネコの生息地

広葉樹林-タイワンヤマネコの生息地

2005-2008年に屏東科技大学野生動物保育研究所が中央の行政院農業委員会林務局から委託を受け、新竹と苗栗の低山区にいる食肉目動物の研究を行った。タイワンヤマネコは研究のポイントとなる動物で、新竹と苗栗の低山地域にオートカメラを設置してタイワンヤマネコの分布状況を調査したほか、無線の追跡設備を利用してその様々な野外での生態習性を研究した。その結果、タイワンヤマネコの生息環境は草生地、農業開墾地と森林がモザイク状に合わさった環境が主であった(裴家騏・陳美汀2008)。タイワンヤマネコは単独で生活する動物で、繁殖期になると他のタイワンヤマネコと一時的に接触を持つ。台湾においてタイワンヤマネコは年間を通して繁殖が可能だが、冬の終わりと初春がピークとなる。交配や出産が終わると雄と雌は全く別に生活し、メスヤマネコが単独で子育ての重責を担う。とはいえ、タイワンヤマネコ1匹の活動範囲には他の個体の存在があり、体にある腺と尿を木の幹にマーキングして自らの匂いを残す。リッジの高い林の下に平たく広がる場所に排泄物を残すのが常で、こうして他のタイワンヤマネコに自分の存在を知らせることで直接衝突するのを防いだり、交配相手を探す。メスは一回の妊娠で1-3匹の子ネコを生み、平均2匹だ。子どもは約5-6か月で母親の元を離れて独立する。

体こそ大きくないが、無線追跡の結果、ジャコウネコやカニクイマングースといったほぼ同じ体形の他の食肉目動物に比べると、タイワンヤマネコの活動範囲ははるかに広い。オスの活動範囲は6-9平方キロメートルで、メスはこれよりやや小さいが少なくとも2平方キロメートルはある。このように活動範囲の広い種は生息地が削られると影響を受けやすく、個体数が減少する (陳美汀 2015) 。タイワンヤマネコは主に夜間に活動する。夕暮れ時が活動のピークで、まれに昼間の活動も見られる。タイワンヤマネコの活動範囲にある生息地は林地が主で、近くの林にある草生地や農業開墾地も利用することがある(陳美汀 2015)。タイワンヤマネコが捕食するのは林、草生地、さらにトゲネズミ、コキバラネズミ、ハツカネズミ、オキナワハツカネズミ、セスジネズミといった農業開墾地にいるネズミ類だ。哺乳動物のほかにも鳥類や爬虫類(トカゲやヘビ)、昆虫も食する(荘琬琪 2012)。このため、タイワンヤマネコは低山における生態系の食物連鎖でピラミッドの頂点にいる捕食者であると同時に、低山の生態系が健全であることがポイントとなる種でもある。なかでもタイワンヤマネコは生態系においてネズミの数を抑制する重要な役割がある。今日、ネズミ類が人類の農作物に及ぼす損失や、疾病を伝播することによる人類の健康への脅威にしても、人々が大自然のタイワンヤマネコに与えた生態での働きと重要性について強い関心を寄せるべきであることを示す。

赤外線カメラがとらえたタイワンヤマネコの写真

赤外線カメラがとらえたタイワンヤマネコの写真

ベンガルヤマネコの分布と個体群の現況
ベンガルヤマネコの分布地域

ベンガルヤマネコの分布地域

ヤマネコは台湾固有の生物だとよく思われがちだが、実はアジアの小型ネコ科動物の中で最も分布の広い種である。分布する地区はアジアの東北部では中国とロシアの境界にある黒竜江流域、日本(ツシマヤマネコとイリオモテヤマネコは亜種)、韓国で、南では中国、台湾、海南島、ベトナム、カンボジア、ラオス、タイ、ミャンマー、東南アジアのフィリピン、マレーシア、インドネシア、西はインド、カシミール、パキスタン北部にまで及ぶ(下図)。ヤマネコは各類の生息地における環境で生息が可能だが、造林地や二次林、農業開墾地など人類が関わったことのある環境にも適応できる。しかし人類によるヤマネコの捕獲と利用はその個体群に多大な影響を及ぼし、特に毛皮交易が主な原因である。中国はヤマネコの毛皮が最も主要な輸出国となっており、文献によると1963年には最高で230,000匹を捕獲、1980年と1981年における毎年の捕獲量も200,000匹を超えている。1989年に行われた国際自然保護連合ネコ科動物専門家グループ(IUCN Cat Specialist Group)の会議では、中国政府が毎年150,000匹のヤマネコの狩猟対価を提案したという報告がある(Sunquist and Sunquist 2002)。スマトラではヤマネコは毛皮や肉の交易の脅威に晒されてはいないが、若い個体がよくペットとして捕獲されているという(Santiapllai and Supraham 1985)。また、ここ何十年かで人類による環境の開発と利用により自然生息地が減少したり、破壊、破砕されたほか、道路開発で交通事故に遭ったり密漁、外来種による侵害などがヤマネコの個体群に影響を与えている(Izawa et. al. 2009, Rajaratnam et. al. 2007, Rho 2009)。

広い分布に対して各国によるヤマネコ個体群の状況に関する研究は多くなく、非常に限られた文献によれば、タイではヤマネコが幅広く分布している(Lekagul and McNeely 1977)が、バングラディシュのヤマネコ個体群は今まさに減少しつつある(Khan 1985)。インドではヤマネコは徐々に減少しており、”vulnerable”という状況だ(Panwar 1984)。中国とロシア辺境のアムール川(黒竜江)流域はもともと非常に限られたヤマネコ個体群の絶滅が危惧されている(Heptner and Sludskii 1992)。日本ではすでに比較的長期にわたるグループ調査が行われており、西表島に生息する亜種のイリオモテヤマネコ(Iriomote cat)は約100匹ほどしかおらず、対馬に生息する亜種のツシマヤマネコ(Tsushima leopard cat)は1967年の200-300匹いたものが徐々に減り、2005年には83-115匹にまで減少している。この二つの亜種はともに日本政府により絶滅危惧種(Endangered species/subspecies)に指定されており、イリオモテヤマネコはIUCNのレッドリストで”Endangered subspecies” に指定されている(Izawa et. al. 2009)。また、韓国ではヤマネコは野生動物保護法(Wildlife Conservation Act)で”Endangered Species Type II”に指定されている(Rho 2009)。タイワンヤマネコはアジアにいるヤマネコの12ある亜種の一つで、古い文献から、ヤマネコが過去において台湾全土の低海抜の山に広く普遍的に分布していた(Kano 1929, 1930, 陳兼善 1956)こと、その後、徐々に特定の地域ではよく見られるという程度にまで減少したことが分かる。それでも全土的に分布が見られた(McCullough 1974)。近年の記録では苗栗県、台中市、南投県に記録が残るのみ(裴家騏・陳美汀 2008、姜博仁等 2015、劉建男等2016)となり、10~20年前にまだ記録が見られたは嘉義県と台南県ではすでに何年もヤマネコの記録がないという。種の分布が年ごとに縮小しているのは明らかで、ヤマネコの危機は日ごとに深刻になっている。タイワンヤマネコの生息地分布を分析すると、現在では345-524匹しかいない(姜博仁等 2015)。行政院農業委員会は1989年にタイワンヤマネコを希少保育野生動物(第Ⅱ類)であると公告し、2008年には希少保育類から絶滅が危惧される保育種第Ⅰ類に引き上げている。

タイワンヤマネコの分布と生態習性に的を絞った最も早期の調査研究は新竹と苗栗の低山区で行われた。2005年から2008年の研究によると、苗栗地区では最西北で海側の竹南鎮と東側で山沿いの南庄郷、泰安郷などはヤマネコの記録はないほか、その他の郷や鎮ではここ10年で記録が見られる。現在すでに確認されているタイワンヤマネコが残存する地区のなかで最も安定した個体群となっている。なかでも後龍鎮から南へ西湖郷、通霄鎮から苑裡鎮まで、東へ銅鑼鎮、三義郷、大湖郷を経て卓蘭鎮の低山地区まではタイワンヤマネコ群が比較的頻繁に出現するホットスポットとなっている。しかしながらタイワンヤマネコの分布が多い地区はほぼ私有地で、新竹地区には出現の記録が一切存在しない(裴家騏・陳美汀 2008)。

2015年から嘉義大学と集集特有生物研究センターも林務局南投林区管理処の協力のもと、南投地区で2年間のヤマネコグループ調査を行った。その結果、タイワンヤマネコは10の郷鎮市の標高1000メートル以下の67カ所のサンプリングポイントで撮影記録された。そのうち集集と中寮、その周辺エリアが主な分布地区であった(劉建男等 2016)。

現在台中市管轄地で完成した一部地区の調査結果によると、台中市の東部低山区域では最北は后里、東勢、そして南へ北屯と新社の交差する地域を経てずっと太平と霧峰の帯状区域までが現在タイワンヤマネコが出現するエリアとなっている。台中市の管轄内に入るヤマネコ個体群は北にある苗栗のヤマネコ個体群と南にある南投にあるヤマネコ個体群との繋がりや遺伝子の交流は極めて重要だ。このため、台中市管轄内のヤマネコの分布と生息現況、生息地の繋がりの強さがヤマネコの個体が安全に活動でき、グループ間の遺伝子交流ができるかが台中市による保育行動の重点の一つとなっている。現時点でのデータによると、大安渓は苗栗と台中の間にいるタイワンヤマネコの交流の通路(皇后里から東勢)を隔てる可能性があるが、大安渓による阻隔は雨季の増水期に限られる。鳥渓もまた台中と南投の間にいるヤマネコの交流通路(霧峰)を隔てる可能性があり、阻隔はやはり雨季増水期のみとなっている。また、台中市管轄内の后里区から石岡区、豊原区の大甲渓による阻隔、そして豊原から東勢方面へ向かう台三線道路による阻隔、さらに豊原、石岡区の破砕された林地や自然生息地の不連続性がタイワンヤマネコの潜在な通路にとってボトルネックとなっており、台中市がヤマネコ生息地保育で解決の向けて努力しなければならない問題となっている。

タイワンヤマネコが直面する脅威

タイワンヤマネコの生息環境は主に人為的活動が頻繁に行われる標高の低い山地や丘陵地帯(低山区)で、多くが私有地となっている。近年、土地開発や農業による開墾、放牧、森林伐採、新しい道路の開拓などの人為的干渉が著しく、適した生息環境が持続的に減少したり破壊されたり、土地移転が多すぎたり、人的干渉から距離をおけない環境など、こうした環境に生息するヤマネコは今まさに多くの脅威に晒されている。

慣行農業による生息地の質低下と生命への脅威も普遍的に広く存在する。農薬、除草剤、殺虫剤、除鼠剤などの使用がタイワンヤマネコの個体群に与える影響について直接的な評価を下した研究は現在のところないが、ネズミの数が減少または体内に残留する毒物が生物に蓄積されれば、直接または間接的にヤマネコの生存に影響するだろう。先ごろ路上で死亡したヤマネコ6匹の個体を毒物検査したところ、肝臓に低濃度の殺ネズミ剤が残留しており、そのうち5匹の胃には相当量の農薬が検出された(陳貞志 未発表資料、裴家騏 未発表資料)。

人とタイワンヤマネコの衝突を防ぐために生じた捕獲と毒殺、特定市場のニーズにより生じた捕獲は一部の地域で聞かれる。現地に異なる規模の地鶏の飼育場があり、多くの住民が食肉目動物(すなわちヤマネコ)が鶏舎に入り家禽を捕獲して経済的な損失につながるという経験がある、またはそう認識しているため、ヤマネコが有害動物だとみなされている。苗栗の高密度でヤマネコがいる区域の研究によると、毎年2月-3%に及ぶ農家が報復として周辺で活動しているヤマネコを駆除(毒殺、捕獲殺害)している(St. John et al. 2015)。このため、タイワンヤマネコの毎年の死亡数は数十匹から百匹にものぼると予測され、社会生息地(social habitat)の質が良好でないことを示している。

ベンガルヤマネコの捕食

ベンガルヤマネコの捕食

希少保育野生動物

希少保育野生動物

このほか、道路での致死も現在知られているタイワンヤマネコの主な即死原因のひとつである。実際、広さ5メートルを超える村の平面道路(産業道路以上の村道、県道、省道などの類型の平面道路)がヤマネコの移動を妨害し、道路上での死亡につながることもある(Chen at al. 2016)。道路が拡散(dispersal)、移動(migration)を妨害することから、ヤマネコ個体群の数が比較的少なく、活動範囲は大きい、または多種の生息地類型が必要な種に与える影響は大きい。通常はこの種の動物は生息地の大きさと形態の需要により、道路の切断と破砕がある状況で道路を通り抜ける必要が更に生じて死亡率の上昇につながる。道路の建設と幅の拡張はヤマネコが利用できる生息面積を縮小するだけでなく、彼らの生息地の完全性を破壊し、絶滅危惧種の絶滅に繋がりやすい。同時に、道路が人為的活動に向かって伸びているため、ヤマネコにある程度の干渉や衝撃を与える。各種の汚染、騒音、ペット、外来種、より多くの人類などが個体群に生息地の劣化や疾病の伝染、競争、被捕食など各方面に影響を及ぼすのだ。

最後に、現在ヤマネコが直面している脅威として飼い犬、飼い猫(野良犬、猫や野生化した犬猫を含む)と食物をめぐる競合、捕食と疾病伝染などが挙げられる。国外の様々な研究から、猫の捕食行為が現地の野生動物に与える脅威は大変大きく、食性が似ている原生の捕食者と直接の資源を争うことになる。現在、この方面での研究は台湾では少なく、屏東の低山区で行われたイエネコによる野生動物の捕食に関するする研究によると、主な狩猟対象は小型の哺乳動物で、次に鳥類や爬虫類、昆虫であった。苗栗の通霄地区における研究では、イエネコは主に昆虫を捕食し、その次に小型の哺乳動物と鳥類を捕らえるという。ここから分かるように、低山区のイエネコは食性的にヤマネコと重なり、とくに小型哺乳動物が比較的少ない生息地や季節ではヤマネコの生存に潜在的な脅威となる。疾病については、苗栗地区の野生の食肉目動物が犬ジステンパーに感染する確率が非常に高く、なかでもヤマネコの陽性率は77.8%にも上ったという研究がある。犬ジステンパーはほぼすべての食肉目種に感染する致死性のある深刻な疾病だ。感染した野生動物の犬ジステンパーウィルスは、地元の犬猫がもたらしたものである可能性が最も高い。飼い猫と飼い犬、そしてヤマネコは同じ食肉目動物であるため、この両種の外来種が現地のヤマネコとその他の食肉目動物にとって疾病を伝染させる脅威となる。

現在のフィールド調査と関連研究によると、タイワンヤマネコが直面する脅威はその深刻さとグループへの影響により以下のように分けられる。

1.人による開発で起こった生息地の減少と破壊。

2.慣行農業で使用する農薬と毒薬により引き起こされる死亡と生息地の質の低下。

3.人とヤマネコの衝突防止により発生した捕獲と毒殺。

4.道路により生じた障害と事故死。

5.市場のニーズにより生じた商業的な不法捕獲。

6.犬、猫等の外来種が起こした捕獲殺害、疾病の伝染と潜在的な食物と資源の競争。

7.住民が地方発展の妨げとなると広く認識しているためタイワンヤマネコを好まず、社会全体としてみた生息地の質が悪い。